Auto Pilot ST2000 User's Manual

和訳してみました。参考にしてください。

第1章 はじめに

1.1 概観

Raymarine「チラーパイロット」は、チラーで舵を取るヨットのオートパイロットに必要な全てを提供するように設計されている。オートパイロットはチラーと船体の接続個所との間に取り付けます。オーナー自身が取り付けることができ、船の12V電源に接続すると直ちに動作するように設計されている。

動作モード
「チラーパイロット」には4つの動作モードがある。
・「standby」モード:オートパイロットは動作しない
・「auto」モード:ある針路にロックしている
・「Track」モード:航行機器からの変針点を結ぶ航跡を維持するようにオートパイロットが動作している
・「WindTrim」モード:見かけの風の方向に対して航路を維持するようにオートパイロットが動作している

「SeaTalk」、「NMEA」との互換性
「チラーパイロット」は「SeaTalk」システムと接続できる。Raymarineの「SeaTalk」機器とデータを共有し、授受することができる。
・風向風速計からの風の情報はウインドベーンによる操舵として使用できる。この場合、新たなベーンを取り付ける必要はない
・航行機器からの航跡情報で変針点に沿って航行することができる
・速度計からの船速により航跡を最適に維持する
・「SeaTalk」と接続できることで、複数の固定操舵ポイントや携帯型制御ユニットを増設することができる
ST1000Plus及びST2000Plusの「チラーパイロット」はNMEA0183あるいはNMEA0180から航行機器データと接続することもできる。
「チラーパイロット」どのようなタイプの船に対しても最高の性能を発揮するように較正することができる。

1.2 仕様

一般仕様
電源 10Vから15V DC
駆動トルク ST1000Plus:57kg(125lb)
ST2000Plus:77kg(170lb)
最大排水量 ST1000Plus:3000kg(6600lb)
ST2000Plus:4500kg(10000lb)
駆動機構 ST1000Plus:歯車駆動
ST2000Plus:循環式ボールベアリング駆動
操舵速度 ST1000Plus:8秒
ST2000Plus:4.5秒
消費電力 ・standby:40mA(最大照度時90mA)
・auto:0.5から1.5A、但しトリム、負荷、
帆走状態に影響される
動作温度 0゜から70゜C(32゜Fから158゜F)
主な特徴 ・6つのデジタルキーパッド
・針路、保針路、航行情報を背面照射LCD表示
・最適性能へのユーザーによる較正
・WindTrimモードでの補正制御
・磁場偏倚の自動補正
・南北方向針路補正
・自動針路不感帯−海況制御
・自動タック
・航海計器組み込みインターフェイス(SeaTalk
及びNMEA)
・進んだ変針点制御

EMCへの順応
全てのRaymarine機器及びアクセサリーは海のレジャー環境での使用に際して必要な工業技術基準を満たすように設計されている。電磁環境基準(EMC)に合致するようにRaymarineの機器は設計・製造されているが、これを満たすには正しい据付をしなければならず、そうでないときは性能の保証はできない。

1.3 このマニュアルについて

第一部 「チラーパイロット」の使用法
この部分では「チラーパイロット」の使用方法を説明する
第2章 「チラーパイロット」の使い方    ページ
「チラーパイロット」をどのように使うか
第3章 メンテナンスと障害探索 ページ
メンテナンスと障害探索情報が提供されている

第二部 「チラーパイロット」の据え付け
この部分では「チラーパイロット」をどのように船に据え付けるかを説明している。
第4章 「チラーパイロット」の据え付け  ページ
「チラーパイロット」とその部品をどのように据え付けるか
第5章 「チラーパイロット」較正     ページ
「チラーパイロット」のチェックと最初の試験航海の実施
第6章 「チラーパイロット」のセッティング調整  ページ
「チラーパイロット」の較正値セッティングの変更
(注)新しいRaymarine製品の据え付け、メンテナンスについての重要な情報を提供している。製品からベストの性能を引き出すには、この説明書全部に目を通すことをお願いしたい。

重要な情報
保証
新しいRaymarine製品を登録するため、ほんの数分間を「保証カード」の記入に費やして頂きたい。オーナー情報を全て記載して我々に返信することは完全保証を受ける為には大変重要なことです。
説明書の情報
我々はベストを尽くして説明書の情報が印刷段階で正確であるように努めている。しかしながら、Raymarineはこの説明書に含まれているかもしれない不正確さや脱落による責任を取ることを容認していない。さらに、常に改善に努めているため、連絡なしに仕様を変更することがありえる。その結果、Raymarineはいかなる製品とその説明書の間の齟齬に基づく責任をとることはできかねる。

安全への注意
警告:製品の据え付け
この装置は、本説明書にある指示に従って据え付け、操作されるべきである。そうでない場合、製品の性能が出なかったり、人身事故に至ったり、あるいはまた船を損傷するかもしれない。
警告:電気事故
電気配線を変更するときはいかなるときでも電源遮断を確認する。
警告:航行機器による支援
この製品は正確で且つ信頼性を十分保つように設計されているが、数多くの要因が性能に影響を与える。結果として言えることは、航行の手助けとしての支援として使うべきで、常識や航海における判断能力にとって代わるものではない。常にワッチを怠らず、何か状況に変化があるときは直ちに対応できるようにしておかなければならない。
Raymarineオートパイロットはボートライフに新しい広がりを与えるものである。しかしながら、船の安全を常に確固たるものに保つのはスキッパーの責任であり、以下の基本的なルールに従わなければならない。
・常に舵には人がいて、緊急時には手動制御ができること
・オートパイロットの外し方を全てのクルーが知っていること
・常に他の船や航行の障害物をチェックしすること。いかに海の見通しが良くてもあっという間に危険な状態に陥ることがありえる
・船の位置を他の航行機器の助けによるか陸標によって常に正確に記録すること
・海図に船の位置を常にプロットすること。オートパイロットが維持している針路には障害物がないことを確認すること。潮の流れに対して十分の余地を持っていること。これはオートパイロットにはできないことである。
・オートパイロットが航行支援機器を使った航跡にロックしているとしても、ログを取り常に位置をプロットすること。航行支援機器は時として重大な間違いを生ずることがあり、オートパイロットはこれを感知することは不可能である。

第2章 「チラーパイロット」の使い方

2.1 概観

警告
オートパイロットを使っての航海は楽しい時を過ごせるが、しかし、時としてワッチを閑却してしまいがちである。どんなに海の視界が明瞭でも常にワッチをしなければならない。
・「チラーパイロット」は「standby」モードで立ち上がる(文字'C'に現針路を点滅表示する)
・「チラーパイロット」は短いビープ音で応答するプッシュボタンを使って制御する。キーを単独に押すメイン制御のほかに、二つのキーを同時に押す操作が幾つかある
・オートパイロットにするには
・針路を定める
・プッシュロッドをチラーピンの上に持ってくる(必要なら、
「-1」「+1」「-10」「-10」ボタンで伸縮させる)
・「auto」を押す:文字'A'と現針路を表示して応える
・いつでも手動操舵に戻れる
・「standby」を押す
・プッシュロッドをチラーピンから外す
・オートパイロットで走っているとき、「-1」「+1」「-10」「+10」を使って針路を変更できる(図 D355−2)

2.2 「auto」モードの使い方

オートパイロットへの入り方(「auto」モード)
(図 D354−2)

1.針路を定める
2.プッシュロッドをチラーピンの上に持ってくる(必要なら、「-1」「+1」「-10」「-10」ボタンで伸縮させる)
3.「auto」を押す:文字'A'と現針路を表示して応える

オートパイロットからの出方(「stanby」モード)
(図 D353−2)

手動操舵に戻る
1.「standby」を押す
2.プッシュロッドをチラーピンから外し、手動操作に戻る:文字'C'に続く現針路を点滅表示して応える
3.取り外したときも針路は記憶されており後で呼び出せる( ページ参照)

針路変更
「auto」モードのとき、「-1」「-10」(ポート)、「+1」「+10」(スターボード)キーを使って1゜及び10゜単位で針路を変更できる。
(図 D3320−2)

例えば、「-10」を3回押せばポートがわに30゜変針する。
(図 D3254−2)

自動タック(AutoTack)
オートパイロットには自動タック機能が組み込まれており(「auto」「Track」及び「WindTrim」モード)、船を100゜回頭させる。
(図 D5399−1)

・ポートにタックするには「-1」と「-10」を同時に押す
・スターボードにタックするには「+1」と「+10」を同時に押す

障害物を避ける
1.オートパイロットで走っているときに障害物を避けるには、針路を変更して適当な方向に変針する。例えば、「-10」を3回押してポートに避航する。
(図 D3255−2)

2.障害物を避けた後、次の何れかの操作ができる
・元の針路に戻る(先の例では、「+10」を3回押す)
あるいは
・以前の針路に戻る(下記参照)

以前の針路への戻り方
1.「auto」を1秒間押す:以前の針路が10秒間点滅する
2.この針路でよければ、点滅している間に「auto」を再び押す
(図 D3256−2)

(注)もし、点滅表示している間に「auto」を押さなかった場合、オートパイロットは現在の針路を保持する。

針路はずれ警告
針路はずれ警告が発せられるのは、オートパイロットで走っており、且つ、船の現針路とオートパイロットの針路とに較正項目6で定められた値以上の差があり、20秒間経過したときである。( ページ参照)
(図 D191−2)

針路はずれ警告の取り消し
針路はずれ警告を取り消すには、「standby」押し、手動操舵に戻る。
(注)針路はずれ警告がなるときは、多分、船のセールが大きすぎるか、あるいはセールのバランスが悪いかを示している。このような時、セールバランスを取り直すと針路保持が著しく改善することが多い。

航行情報表示
もし航行情報(例えば、変針点までの距離、クロストラックエラー、変針点まで針路など)が取り込めるのであれば、「atuo」や「standby」モードで「-1」と「+10」、あるいは「+1」と「-10」を同時に瞬間押せば表示できる。航行情報を繰り返し順次表示する。
(図 D178−2)

通常の操作に戻るには「-1」と「+10」、あるいは「+1」と「-10」を同時に瞬間押せばよい。

不感帯の自動制御(「AutoSeastate」)
「auto」,「WindTrim」あるいは「Track」モードでは、デフォルトとして「チラーパイロット」は「AutoSeastate」(自動不感帯制御)になっている。このモードでは、同じことを繰り返して元に戻るというような船の動きを次第に無視して真の針路ずれにのみ応答するようになっていく。
舵が不必要な動きをしなくてよいように、「AutoSeastate」モードでは電力消費量と針路維持の正確さを勘案した最適な動きをする。
もし、「AutoSeastate」をきるのであれば:
1.「auto」、「WindTrim」あるいは「Track」モードからは「-1」と「+1」を同時に押すことで「AutoSeastate」から「固定最小不感帯」モードに変更できる。
2."゜"サインが「固定最小不感帯」モードが選択されたときは点滅表示される。このモードでは可能な限り針路を厳密に維持しようとするが、反面、電力消費量と駆動ユニットの動きは大きくなる。
(図 D360−3a)

「AutoSeastate」に戻るには、再び「-1」と「+1」を同時に押せばよい。
(注)「standby」モードを選択するたびに「自動不感帯制御」に戻る。

操作上のヒント−トリムの変更
注意:
大きく針路を変更するときは、必ず手動で行うこと。これによって、船は安全に障害物や他の船を避けることができるとともに、風の変化や海況の変化を勘案した新しい針路が設定できる。然る後にオートパイロットにする。
進路の大幅な変更では見かけの風の方向が大きく変わり、セールトリムを合わせなければならなくなる。急にトリム変化が起こると(例えば、ウェザーヘルムやセールバランスの変化)、舵で元の針路に戻るまでにはタップリ1分間は遅れが出る。
このような状況では、オートパイロットは新しい針路を直ぐに決めかね、自動とリムが確立するまでは今の進路のままで居るほかなくなる。この問題を避けるためには、大きい針路変更では次の様な手順によるべきである:
1.新しい針路を確認する
2.「standby」を押し、プッシュロッドをチラーピンから外し、手動にする
3.船を新しい針路に持っていきプッシュロッドをチラーピンに取り付ける
4.「auto」を押して、新しい針路にセットする
5.「-1」及び「+1」ボタンで1゜単位に最終針路に船を乗せる

突風下の帆走
突風が吹くときは、針路はよろめきがちになる。特に、セールバランスが悪いときは顕著である。セールバランスを改善すると針路維持が容易になる。
以下の配慮をすると、オートパイロットはゲール段階の風でも制御を維持できる。
・船のヒールを必要以上に大きくしない
・ヒールとウェザーヘルムを下げるためメインシートトラベラーを風下に下げる
・必要なら、メインセールのリーフを早めに行う
・強風時と波が高い時は真追っ手を避けることが望ましい(もし可能であれば)
・理想的には、真追っ手から最低30゜離しておく
・さらに厳しい状況になれば、メインセールを取り外しヘッドセールのみで走ることが望ましい

2.3 表示照度の切り替え

「チラーパイロット」が「standby」モードのとき表示部の照度を切替えることができる。
・「standby」モードから、「-1」と「+1」を同時に押すと照度は(L1)と(L0)の間を切り替わる
・元のモードに戻るには10秒間待つか、適当なモードキーを押せばよい
(図 D364−2)

(注)電源投入直後は照度スイッチは(L1)のオン状態である。
「SeaTalk」を介して他のオートパイロット機器か「SeaTalk」機器が接続されているときは、これらの機器からも「チラーパイロット」の照度を制御することができる。

2.4 「Track」モードの使い方

「Track」モードでは「チラーパイロット」は航行機器からの変針点を結ぶ航跡を保つように制御する。「チラーパイロット」は航跡を保つために必要な針路の変更量を計算し自動的に潮流やリーウェイを補正する。「Track」モードでは「チラーパイロット」は次のいずれかの機器からクロストラックエラー量を受け取る必要がある。
・「SeaTalk」航行機器、あるいは
・「SeaTalk」機器以外の航行機器では「NMEA0180」あるいは「0183」形式のデータ発信をする機器

「Track」モードの選択
「Track」モードを選択する場合、「チラーパイロット」は航跡情報を次の二つのうちの何れか一方より受け取らなければならない。
・自動航跡情報収集 クロストラックエラーと変針点まで針路の両方が収集可能なとき
・手動航跡情報収集 クロストラックエラーのみが収集可能なとき

自動航跡情報収集
もし、クロストラックエラーと変針点までの針路が両方とも入力可能なとき(「SeaTalk」または「NMEA」を介して)、自動的に航跡情報を収集できる。
1.船を航跡の0.1海里以内にもっていく
2.「auto」ボタンを押す
3.「-10」と「+10」を同時に押して「Track」モードに入る
4.警報が鳴り次の表示を交互に表示する
・変針点への針路
・新しい航跡に向かう船の方向
(図 D3277−2)

5.新しい針路に転針しても安全か確認する
6.「-10」と「+10」を同時に押す
・船は新しい方向に転針する
・警報は止む
(図 D3257−2)

7.次の航行情報を繰り返し順次に表示する
(図 D178−2)

手動航跡情報収集
航行機器からクロストラックエラーのみしか入力できないとき、航跡情報を手動で入れなければならない
1.航跡の0.1海里以内に船を持っていく
2.新しい変針点に対して5゜以内の針路に船を持っていく
3.「auto」ボタンを押す
4.「-10」と「+10」を同時に押して「Track」モードに入る
・オートパイロットは新しい変針点へのトラックを開始する
・クロストラックエラーとオートパイロットの針路が交互表示される
低速での手動航跡情報収集
手動航跡情報収集を船の速度が遅いときに行うときは、潮流の影響が船の速度が速い場合に比べて顕著に現れるので更なる注意が必要である。
一般的に言って、船の速度の35%未満の潮流速度のときは、「Track」モードでの「チラーパイロット」の性能に差異があることは分からない。しかしながら、手動航跡情報収集では次の注意をすべきである。
・「Track」モードに入る前に、船が航跡にできるだけ接近していること、及び次の変針点方向に引いた対地航跡の方向にできるだけ近づいていることを確認しなければならない
・もし、航行上の危険が予想され得る状況では、常に一定間隔で船の位置をチェックすることは不可欠になる

「Track」モードから「auto」への戻り方
「Track」モードから「auto」への戻るには:
・「auto」ボタンを押す
・「-10」と「+10」ボタンを同時に押す

クロストラックエラー
クロストラックエラーとは現在の船の航跡と計画した航跡の間の距離である。この値は、海里で表され、航行機器から直接受け取ることができる。
(図 D3260−2)

「チラーパイロット」は次の様にしてクロストラックエラーを表示する
(図 D3294−2)

潮流による影響の補償
ほとんどの場合、「Track」モードでは航跡に対して±0.05海里(300ft)以内に針路を保持している。
オートパイロットは広い範囲の船の速度変化に対して最適な性能を維持するために船の速度を考慮に入れている。もし、速度データが取り入れ可能なら、この艇速を使う。そうでないときは、較正値5に定める航行速度をデフォルトとして使う。
(図 D3261−2)

変針点到着と転針
重要注意:
変針点での転針は「チラーパイロット」が変針点への針路及び変針点の名前情報を正しく受け取ったときにのみ動作する。
「チラーパイロット」は変針点の名前の最初の4文字のみを解読する。もし、4文字以上の文字があって解読できないときは、変針点での転針機能は取りやめになる。
航行機器が正しい変針点の名前と次の変針点までの針路を発信するならば、次の変針点への転針は「-10」と「+10」を同時に押すだけで良い。
到着:
船が目標の変針点を通過するとき、航行機器は手動または自動で次の目標となる変針点を選択する。そうするとパイロットは
・新しい変針点の名前を解読する
・変針点での転針時期であることを警報で示す
・新しい変針点への針路と船の転舵方向を表示する

転針:
変針点での転針を示す警告が鳴っている間は、「チラーパイロット」は「Track」モードを停止し現在の針路を維持したままでいる。
・新しい航跡へ転針しても安全かチェックする
・「-10」と「+10」を同時に押す:警報が止み新しい変針点に向かって回頭する
この方法での変針点での転針をしない限り、警報は鳴りつづけ「チラーパイロット」は現在の針路を走りつづける。

「Track」モードでの避航
「Track」モードではキーパッドから全ての制御ができる
・「-1」「+1」「-10」「+10」を使って避航操作ができる
・危険を回避した後、避航操作から針路を元に戻すには同じ量の針路変更データを逆方向に加えなければならない
・このとき、航跡に対して0.1海里以内にあれば、航跡に戻る操作は何ら必要がない

「Track」モードでの安全
警告:
航行上の複雑な状況下においても「Track」モードは航跡を正確に辿ることができるが、船の安全を確保する責任は常にスキッパーにあり、注意深く航海し且つ頻繁に位置を確認しなければならない。
「Track」モードでは風や潮流の流れによる影響を補償して正確な航跡通過することを支援する。しかし、常にプロットして正確なログを取り続けなければならない。
航海の出発点での位置の確認
・航海の出発時においては航行機器によって確実な目標物から確実な位置を得ることができる
・固定陸標をチェックして位置エラーを補正する
計算上の位置の照合
・固定陸標があれば、常に平均針路及び距離計から計算して得られた位置と照合する

頻繁なプロッティング
・外海では最低1時間に1回は位置をプロットすべきである
・狭い海域や危険が予想される場合は、より頻繁にプロットすべきである

変針点の設定
・電波の状態の変化や、潮流の変化によって、予定した航跡からずれることがある。変針点を設定する場合、これらの偏倚が起こりえることを考慮に入れなければならない
・全部の航跡をチェックする。航跡のどちらの側の0.5海里以内には危険がないことを確認する
・変針点での転針機能を使うときは、隣り合う変針点の名前に使う4文字の最後の文字は異なっていることが必要である。

「Track」モードでの警告メッセージ
「Track」データが来ない
(図 D167−4)

「チラーパイロット」は、オートパイロットが航行情報を受け取っていないときに「Track」モードにするとこのメッセージを表示する

「Track」データエラー
(図 D167−5)

「チラーパイロット」は、航海機器が位置をフィックスできないときに、「Track」モードを選択するとこのメッセージを表示する。

クロストラックエラーが大きい
(図 D234−2)

クロストラックエラーが0.3海里を越えたとき警報が鳴る。

変針点での転針
(図 D208−2)

目標となる変針点の番号が変ったときは常に警報が鳴る。
・現針路を維持したまま、次の変針点への針路とこれに向かう船の方向を交互に表示する
・回頭が安全と確認され、回頭準備が整ったとき、「-10」と「+10」を同時に瞬間押す
・新しい針路に回頭し、次の変針点への航跡に乗る
(注)正しい進路と変針点番号が得られるときにのみ変針点での転針が行われる。

2.5 「WindTrim」モードの使い方

(注):風向データを示すセンサーあるいは装置と適切に「チラーパイロット」が接続されなければ「WindTrim」モードは使えない
「WindTrim」モードになるには、「チラーパイロット」は次の情報源の一つから風の情報を受け取る必要がある。
・「SeaTalk」風向風力計
・「NMEA」風向風力計
・「SeaTalk」を介して接続されたRaymarineのプッシュピット型ウィンドベーン(部品番号Z159)
「WindTrim」モードでは「チラーパイロット」は、見かけの風の角度を維持するように針路を保つ。「WindTrim」を使うと短期間の風のふらつきによる影響を打ち消すことができる。消費電力を最小に抑えて円滑で正確な航海ができる。
「WindTrim」モードでは針路の基準として磁束コンパスを使う。見かけの風の方向が変化したとき「チラーパイロット」は針路を元の見かけの風の方向を維持するように変更する。
「WindTrim」モードでは、風の方向がちょっとの間振れてもこれを無視するが、真の風がわずか1゜ずれても追随する。

「WindTrim」モードへの選択
「standby」モードあるいは「auto」モードのから、「standby」ボタンと「auto」ボタンを同時に押すと、「WindTrim」モードに入れる。「チラーパイロット」は現在の見かけの風の方向を維持するように働く
(注):「WindTrim」モードでは30秒に1回ビープ音を発する
(図 D5558−1)

「WindTrim」モードからの戻り方
「WindTrim」モードから抜け出るには、
・「standby」ボタンを押すと「standby」モードになる
・「auto」ボタンを押すと「auto」モードになる

元の見かけの風の方向に戻るには
見かけの風の方向から何らかの理由で離れたとき(例えば、障害物を避航したときや「standby」を選択したとき)、以前の見かけの風の方向に戻ることができる:
(図 D360−3)

1.「standby」ボタンと「auto」ボタンを1秒以上
同時に押し続ける
2.以前の針路を10秒間点滅表示する
3.表示が点滅している間に、「standby」ボタンと「auto」ボタンを同時に押して以前の針路に戻る
・元の進路を選択したとき、"W"の文字が10秒間点滅して応答する

風向の変化の警告
元のコンパス針路に対して風が15゜以上振れたときは、警報が鳴る。
表示には、現在の「WindTrim」の針路と風の振れた方向が交互に表示される。
(図 D209−2)

風の振れの警告を消すには
・新しい針路に危険がないことを確認
・「standby」ボタンと「auto」ボタンを同時に瞬間押し警告を了承したことを知らせ、警報を消すと同時に現針路に対する風の振れ量をリセットする

「WindTrim」モードでの操作上のヒント
・「WindTrim」ではウィンドベーンからの出力を取り除いている。このことで、真の風の振れが徐々に生じる外洋での状況に最適に動作することができる
・突風があるときや不安定な近海では、風の方向から数度ずらして航行し、見かけの風の変化を吸収することが望ましい
・セールトリムやメインシートトラベラーの位置を調整してヘルム量を最小に保つことが重要である
・ヘッドセールとメインセールは遅すぎるより早めにリーフすることが大切である。

第3章 メンテナンスと障害探索

「チラーパイロット」のメンテナンスに関する情報と、製品サポート及び一般的な問題解決法を述べる。

3.1 一般的なメンテナンス

注意:
「チラーパイロット」の動作部分は工場でライフタイムに耐えるようにシールされ潤滑油を注油されている。「チラーパイロット」にはユーザーが手入れをしなければならない部品はひとつもない。もし、修理が必要になった場合は、必ず認定を受けたRaymarineのサービス代理店で行う必要がある。

表示部分の結露
・状況によっては、LCD表示部に結露が現れることがある。これによって機器には何らの影響が生ずるものではなく、暫く照明をしておくときれいになる。

配線ケーブルチェック
・全ての接続部分はしっかりと接続されていることを確認する
・ケーブルに疲労や傷の兆候があるかを検査し、損傷があるケーブルは取り替えねばならない

「チラーパイロット」の清掃
・「チラーパイロット」に埃がついていたら、きれいな濡れた布で拭き取る
・「チラーパイロット」を掃除するのに化学物質や鑢にようなものを使わないこと

EMC対策
・電源投入のときは、全ての電気機器は電磁界を発生する。これは、電気機器同士互いに影響を及ぼしあい、その結果、動作が不安定になることがありえる。
・この影響を最小限に止め、Raymarine機器ができるだけ最良の状態で動作するように、据え付け方法にガイドラインを示しており、これに従うことで異なる機器の間の干渉を最小に止め、電磁気環境両立性(EMC)を最適に保つことができる。
・なにかEMCに関する問題があった場合は必ず、近くのRaymarineディーラーに連絡する
・実際の据付では、他の機器からの影響を受けるざるを得ないことがありえる。一般的に言って、このような場合でも機器に損害を与えることはなく、ただ頻繁にリセットをすることになるか、瞬間的に誤動作するに留まる。

3.2 製品サポート

Raymarine製品は世界中に取扱店及び認定したサービス代理店を持っている。オートパイロットを送り返そうとする前に、電源ケーブルに異常がないか、全ての接続部分は確実に接続され腐食がないかを確認する。もし、接続に問題がなければ、次の障害探索セクションの指示に従ってみる。
このとき、原因を特定または切り分けをすることができない場合は、現地の取扱店あるいはサービス代理店あるいはRaymarine技術サービスコールセンターに相談する。裏表紙に相談すべき取扱店の一覧がある。
相談するときは必ずシリアル番号を参照にする(この番号は「チラーパイロット」の下側にプリントしてある)

3.3 障害探索

長年にわたりRaymarineの製品はトラブルフリーを目指した設計を行ってきている。出荷前には徹底したテストと品質保証手続きを受けている。それでも、万一オートパイロットに不具合が生じたときは、以下のテーブルに従うことで問題点を特定したり、あるいは解決策にいたることができる。もし、問題を解決できなかった場合は、現地の取扱店か、サービス代理店か、あるいはRaymarine技術サービスコールセンターに相談する。

症状 解決策

表示が出ない 無電源・・ヒューズ/ブレーカチェック

表示の針路が船の針路と不一致 コンパスが磁気偏倚を補正していない・
・・偏倚補正と整列手続きする(5章)

回頭が遅く針路に乗るのに時間 舵ゲインが不足(5章)
が掛かる

北向きで不安定(北半球) 南北方向針路補正がされてない(6章)
あるいは南半球で南向き

補正しようとすると アクセスが禁止されている(6章)
'CAL OFF'を表示

他のSeaTalk機器と接続しない アクセスが禁止されている(6章)

位置情報を受け付けない 航行機器が適切な情報を送っていない

次の変針点に転針しない 航行機器より次の変針点の針路が
あたえられていない

表示部に破線が回転する コンパス偏倚を自動補正している

破線を表示する データが来ない・・ケーブルチェック

'Err'を表示する 航行機器が位置特定できない
・・航行機器の説明書に従って検査

第4章 「チラーパイロット」の据え付け

4.1 据え付け計画

「チラーパイロット」を据え付け始める前に、図を参照にしてパーツリストをチェックする。次に述べる情報とこの章に述べている関連するところを一通り読み通す。
(図 D3361−2)

配線のガイドライン
・ケーブルを機器間にどのように渡すか検討する
・できるだけビルジを避けて配線する
・蛍光灯、エンジン、無線送信機の近くを避けて配線する

EMCを満たす据え付けガイドライン
Raymarineの機器及びアクセサリーは、レジャーでのマリン環境において使用するに必要な工業基準に全て満たしている。設計及び製造段階では適切に電磁環境両立性(EMC)を確保しているが、この特性は適切に据え付けられてこそはじめて確かなものとなる。
どのような環境のもとでも適切に動作するようにたゆまぬ努力を続けているが、製品の動作に影響を及ぼす要因を理解しておくとは大切なことである。ここで述べるガイドラインは最適なEMCの性能を引き出すものである、しかし、全ての場合にこれらの条件が満たされるは考えていない。EMCの性能を限られた場所と制約の元に最大限発揮する為、常に異なった電気機器との間の空間をできるだけ広く取ることを奨める。

最適なEMC性能のため、以下のことを推奨する。
・Raymarine機器とケーブルは次の様に接続する
・無線送信をする機器や送信信号が流れるケーブル、
例えばVHF無線、その送信ケーブル及びアンテナから
最低3ft(1m)離す
・レーダービームの通り道から7ft(2m)は最低離すこと
レーダービームは電波を発信する送信部の上下に20゜の幅で
広がっていると考えておけば通常は問題ない
・機器はエンジン始動する電源とは別に給電される。10V以下に下がった電源電圧や始動モーターが発生するスパイク雑音が機器をリセットすることがある。このことは、機器に損傷を与えるということではなく、ただ、其れまでの情報が失われたり、操作モードが勝手に変ってしまう結果をもたらす。
・Raymarineが規定するケーブルを使用する。ケーブルを切断したり接続したりする場合,据え付け方法のマニュアルに詳述されている方法に従う限り、EMC特性を維持することができる。
・ケーブルに雑音除去フェライトが取り付けられている場合、これを取り外してはならない。据え付け時にやむなく取り外す場合は、後で同じ所に戻しておかなければならない。

EMC雑音除去フェライト
磁束コンパスや電源ケーブルには雑音除去フェライトを取り付けている。かならず、Raymarineより提供されるフェライトを使わなければならない。
(図 D3548−2)

他の機器への接続
Raymarineの装置をRaymarineが提供するケーブル以外のもので他の装置に接続するとき、Raymarineの装置の近くには必ず雑音除去フェライトを取り付けておかなければならない。

4.2 チラーピン及び取り付けソケットの据え付け

注意:
「チラーパイロット」にはコンパスが組み込まれているので、船のコンパスとは最低でも750mm(2ft6in)は離しておかなければならない。

最重要寸法の測定
「チラーパイロット」は舵と船体の固定点との間に取り付けられる。正しい据え付けには二つの寸法が最も重要である。
・寸法A=589mm(23.2in):船体のソケットからチラーピンにいたる距離
注:この距離はプッシュロッド延長部品や張り出し取り付け部品を使えばより長くすることができる。
・寸法B=460mm(18in):舵の回転中心よりチラーピンまでの距離
(図 D3198−2)

これらの最重要寸法を測定するには:
1.舵を船の船首尾線に固定する
2.マスキングテープで固定点をマークし寸法A、Bを寸法を測る
注:標準取り付けでは、寸法Aはコクピットのスターボード側に測る。もし、「チラーパイロット」をポート側に取り付ける必要が生じた場合、ポート側に寸法Aを取ることができる。しかしながら、据え付けを終えた後に「チラーパイロット」の「Operating sense」の反転操作をしなければならない(5章)。
3.次のことを確認する
・寸法A、Bは互いに直交していなければならない
・「チラーパイロット」は水平に取り付けなければならない

基本部分の取り付け
制御するに必要な寸法AとBが得られたならば、普通の場合、「チラーパイロット」はコクピットの座席に取り付けることができる。
(図 D3192−2)

チラーピンの取り付け
1.直径6mm(1/4in)で深さ25mm(1in)の穴を舵にマークしておいた位置にドリルで開ける。
2.2液混合エポキシ(例えばアラルダイト)で取り付けソケットを取り付け、固定する。
3.ピンの肩の部分の高さは舵表面から12.5mm(1/2in)に位置する

船体ソケットの取り付け
1.コクピットの座席にマークしておいたところに直径12.5mm(1/2in)で深さ25mm(1in)の穴をドリルで開ける。
2.取り付け位置で舵柄の厚さが25mm(1in)に満たないとき、舵の下側に合板を貼り付け補強する。
3.取り付けソケットを2液混合エポキシで固定する
注意:
「チラーパイロット」はプッシュロッドに大きな力を発生するので、次のことを守らなければならない。
・穴は規定の大きさを保つようにドリルで穴を開け、必要があれば補強する
・負荷を加える前に十分硬化させておく

アクセサリーの取り付け
「チラーパイロット」を今まで述べた方法では直接コクピット座席に取り付けられない場合、次の取り付け用のアクセサリーを一つまたは幾つか組み合わせて使うことができる。
・プッシュロッド延長部品
・チラーブラケット
・張り出し取り付け部品
・マウント持ち上げ部品
・交換用チラーピン

プッシュロッド延長部品
プッシュロッドの長さを延ばす必要がある場合(取り付けマウントから船のセンターラインに持っていくために必要な距離を得るため)、Raymarineプッシュロッド延長部品を使う。
正しいプッシュロッド延長部品の寸法測定
1.舵船のセンターラインにおく
2.寸法Cを測定
3.次の表から適当な長さの(パーツ番号も)プッシュロッド延長部品を選択する
(図 D3193−2)

プッシュロッド延長部品の取り付け
プッシュロッド延長部品の取り付け方法:
1.「チラーパイロット」のプッシュロッドの端部のねじ込みを外す
2.延長部品をプッシュロッドにねじ込んで取り付ける
3.プッシュロッドの端部を延長部品の先にねじ込む

チラーブラケット
もし、舵の位置が取り付けソケットより高すぎたり、逆に低すぎたりした場合、Raymarineのチラーブラケットを使って「チラーパイロット」を水平に保つ取り付けができる。
正しいチラーブラケットの選択
1.舵を船のセンターラインに固定する
2.寸法Dを(プッシュロッドが舵より高いとき)あるいは、寸法E(プッシュロッドが舵より低いとき)を測定する
3.次の表から適当なブラケットを選択する
(図 D3194−2)

チラーブラケットの取り付け
1.舵柄の中心線上にチラーブラケットを置き、最重要寸法A、Bを確定する
注意:舵柄が傾いている場合は以前の図を参考にして寸法Bを測定する
2.ブラケット取り付け穴の位置2つをマークする
3.今マークした位置に直径6mm(1/4in)の大きさの穴を2つ、ドリルで打ち抜く
4.直径6mm(1/4in)のボルトとナット及びワッシャーでブラケットを仮に取り付ける
5.固定ボルトを2液混合エポキシで固定する
6.エポキシが完全に硬化したらナットを締め上げる
7.ブラケットにチラーピンを取り付ける

張り出し取り付け部品
船の垂直な部分(コクピットの横壁)に「チラーパイロット」を取り付ける必要に迫られた場合、Ratmarine張り出し取り付け部品を使う(部品番号D031):
・最大張り出し距離は254mm(10in)である
・取り付けに際して必要な長さに切ることができる
張り出し取り付け部品のカット
1.舵を船のセンターラインに合わせる
2.寸法Fを測定する(実測)
3.張り出し部品の必要なカット長を得る
カットする前にダブルチェックをする
4.取り付け位置からのロッドの長さを測り、金切鋸で切る。エッジは鑢で落とす
(図 D3196−2)

張り出し取り付けアセンブリの取り付け
張り出し取り付け部品を取り付けるには:
1.取り付けリングの中に張り出し取り付けアセンブリを仮止めする
2.「チラーパイロット」が水平であることを確認して、取り付けリング及び取り付け穴をマークする
3.ドリルで6mm(1/4in)の穴をマークしたところに開ける
4.シリコンシーラントのコートを塗って取り付けリングを乗せる
5.直径6mm(1/4in)のボルト、ナット及びワッシャで取り付けリングをバックプレートに取り付ける(図に示すようにバッキングプレートは取り付け面の反対側にある)
6.締め付けて固定する
7.張り出し取り付け部品の端とキャップの内側をざらざらにして、2液混合エポキシを入れてから嵌合する
8.ロッドにキャップを入れるとき、「チラーパイロット」の取り付けピン用の穴が上を向いていること確認する。負荷を与える前にエポキシを十分硬化させる
注意:「チラーパイロット」を使わないときは、ロッドアセンブリのねじ込みを外してコクピットの邪魔にならないところに仕舞って置く

マウント持ち上げ部品
「チラーパイロット」を水平に保つために、取り付けソケットの高さをあげる必要があるとき、Raymarineのマウント持ち上げアセンブリを使う。
適切なマウント持ち上げ部品の選び方
(図 D3197−2)

1.舵を船のセンターラインに持っていく
2.最重要寸法A、Bを確立する
3.「チラーパイロット」の水平を保ち、寸法Gを測る
4.次の表から適切なアセンブリを選ぶ

マウント持ち上げ部品の取り付け
1.取り付けリングの位置をコクピットの座席または台の上にマークする
2.最重要寸法A、Bを確認する
3.取り付けリングの穴の位置をマークし直径6mm(1/4in)の穴を3つ開ける
4.シリコーンシーラントをコートした上にマウントリングを乗せる
5.直径6mm(1/4in)のボルト、ナット及びワッシャでバッキングプレートに固定する(図に示すようにバッキングプレートは取り付け面の反対側にある)
6.取り付けリングをしっかりと締め付ける
注意::「チラーパイロット」を使わないときは、ロッドアセンブリのねじ込みを外してコクピットの邪魔にならないところに仕舞って置く

交換用チラーピン
標準から外れた据え付けをせざるを得ない場合に対して、以下の長さのチラーピンをRaymarine取扱店で提供している。

4.3 配線と配線ソケットの取り付け

防水プラグとソケットを介して「チラーパイロット」に電源及びデータが接続される。プラグは既に組み立てた状態で届けられ、ソケットは「チラーパイロット」と隣り合わせのコクピットのどこかに取り付ける。
(図 D305−3)

ソケットの取り付け
次に様にして「チラーパイロット」のソケットを取り付ける:
(図 D3296−2)

1.型紙(この説明書の末尾に記載)をバルクヘッドに当てる
2.ケーブルの頭が十分通る21mm(53/64in)の穴を開ける
3.タッピングネジ用に2.5mm(3/32in)の穴を4つドリルで開ける
4.型紙をはずす
5.バルクヘッド及びガスケットに電源及び他のケーブル(SeaTalk及びNEMA)を通す
6.下図に示すようにマイナスドライバーでケーブルをソケットに接続する
(図 D3297−2)

7.4つのタッピングネジの一つにゴムキャップを取り付ける
8.タッピングでソケットをバルクヘッドに確実に取り付ける
9.クリップを使ってケーブル類を定間隔に固定する
10.ソケットにケーブルプラグを差込み取り付けナットを締めこむ
11.プラグが何かの拍子に抜け落ちることがないように保持リングは設計されているので、取り付けナットを締めこんだ後、保持リングをプラグの方向に戻してナットをソケットに保持する

電源の供給
(図 D3265−2)

・「チラーパイロット」には専用の電源が必要である。このことは「SeaTalk」装置からは電源を供給できないことを意味する
・電源は船の中央配電盤から直接に接続され、12Aあるいは相当のブレーカで保護されなければない。
電源供給線は次のケーブルサイズが必要である。

ケーブル長 銅線断面積 AWG
2.5m(8ft)まで 1.5mm2 16
4m(13ft)まで 2.5mm2 14
重要:
適切なサイズの電源ケーブルはオートパイロットの正常な動作には不可欠である。もし、不安があるときは指定より太目のケーブルを使用する。細いケーブルだと電圧降下の原因となる。こうなると操舵パワーが不足することになる。

「SeaTalk」の配線
(図 D366−2)

注意:
「SeaTalk」への電源供給線(赤)を保護するため5A(あるいは相当のブレーカ)を「チラーパイロット」にできるだけ近い位置に取り付ける。もし、必要とあらば、「チラーパイロット」を「SeaTalk」バスと接続するために適切な「SeaTalk」インターフェイスケーブルを使う(部品番号D229:フラットモジュールプラグ、D179:オス型の丸プラグ、D181:メス型の丸プラグ)。
下図に示すように「SeaTalk」ケーブルを「チラーパイロット」ソケットに接続する。こうすることで「SeaTalk」のデータを取り込めると共に、「チラーパイロット」からは「SeaTalk」に電源を供給することができる。
Raymarineからは種々の「SeaTalk」アクセサリーケーブルを提供しており、これを使って、「チラーパイロット」と「SeaTalk」機器及び制御ユニットを接続できる。
・最新の「SeaTalk」機器に対してはフラット型のプラグ(例えば、ST30,ST40,ST60)
・これまでの「SeaTalk」機器には丸型プラグ(例えば、ST50)
(図 D5554−1)

リモートコントロールケーブル
「チラーパイロット」を次の装置から使うこともできる。
・フル機能ST600Rリモコンユニット(部品番号:A12016)
・「SeaTalk」携帯リモコン(部品番号:Z101)
次の図に、リモコンと接続法を示す。
(図 D3279−2)

「NMEA」の配線
必要なら、「NMEA」航行機器や風向風速計を「チラーパイロット」と接続することができる。「Track」モードや「WindTrim」モードでこれらの情報を使う。
「NMEA」データの認識
次に認識することができる「NMEA」データを一覧で示す

情報 「NMEA」0183データ
クロストラックエラー APB,APA,RMB,XTE,XTR
変針点への針路 APB,BPI,BWR,BWC,
BER,BEC,RMB
変針点までの距離 WDR,WDC,BPI,BWR,BWC
BER,REC,RMB
変針点番号 APA,APB,BPI,BWR,WDR
BWC,WDC,RMB,BOD,WCV
BER,BEC
対水速度 VHW
見かけの風の方向と速度 VWR

(図 D3662−2)

「NNEA」と「SeaTalk」との接続
(図 D3280−2)

第五章 「チラーパイロット」による自動操縦

この章では「チラーパイロット」をすえつけた後、どのように自動操縦するかを説明する。海上での実験を伴う幾つかの簡単な機能テストを含んでいる。

5.1 機能テスト

Switch on
1.主電源スイッチを入れる
2.オートパイロットはビープ音を発し、パイロットの番号(ST1000またはST2000)を表示する。
3.2秒以内に、文字'C'に続くコンパス針路を点滅表示する(例えば C234)。これにより、オートパイロットが動き出したことが分かる。
(注)もし、「チラーパイロット」がビープ音を発しないとか、コンパス針路を表示しない場合は、「故障診断」の部(原文28p)を参照してください。

Operating sense
「Operating sense」とは、針路変更ボタンを押されたとき、あるいは船がコースを外れたときに操舵装置に「チラーパイロット」が与えるべき方向で定義する。「Operating sense」のチェック。
1.プッシュロッド・エンドをチラーピンの上に置く
2.「+10」を押す
3.操舵装置は船がスターボードに向くように動くはずである
(図 D168−3)

4.もし、操舵装置がポートに向かうように動くならば、次の「Operating sense」の反転操作を参考にして欲しい。

「Operating sense」の反転
もし、必要なら次の様にして「Operating sense」を反転することができる。
1.「−1」と「+1」を同時に5秒間押す
2.新しい「Operating sense」(ポート、あるいはスターボード)が5秒間表示された後、オートパイロットは通常動作に復帰する

航海計器とのインターフェイスチェック
「チラーパイロット」を航海計器(GPS)に接続するのであれば、次に様にしてインターフェイスをチェックする
1.航海計器の「クロストラックエラー」を0から0.3海里にセットアップする
2.「auto」ボタンを押してオートモードに入る
3.「−10」と「+10」を同時に押して「トラック」モードに入る
4.アラーム音が鳴り、ウェイポイントへの針路と距離を交互に表示し、船はこれに近づいていく
(図 D208−2)

5.新針路に向かうことが安全と確認して、「−10」と「+10」ボタンを再度同時に押す
6.もし、航海計器が正しく接続されていれば、表示可能な航海データを順次表示するであろう
(図 D3267−2)

航海計器エラー表示
もし、表示が下記の何れかのエラー表示をしていれば、原因は次の何れかである。
・配線ミス
・航海計器の発するデータのフォーマットが適合していない
トラックデータを受信しない場合
(図 D3268−2)

このエラーメッセージの場合、データが受信されていないことを示す。多分配線エラーであり、断線かショートをしているか、あるいは接続が反対になっているかである。
トラックデータエラーの場合
(図 D3269−2)

このエラーメッセージの場合、航海計器が安定していないことを示す。次のステップに進むには航海計器の説明書を参考にして直す必要がある。

風向風速計とのインターフェイス
「チラーパイロット」と風向風速計を接続しているときは、データのリンクを次の様にしてチェックする
1.「standby」と「auto」を同時に押す
2.「チラーパイロット」は文字'W'に続く固定針路を表示する
(図 D3270−2)

文字'C'と現在の針路を点滅表示しつづける場合、「チラーパイロット」は風向風速データを受け取っていない。多分、配線エラーで、断線、ショート、あるいは接続が反対のいずれかである。

「SeaTalk」インターフェイスのチェック
「チラーパイロット」が「SeaTalk」を介して他の計器や制御装置と接続されている場合、リンクを次の様にしてチェックする。
1.「standby」ボタンを押す
(図 D3271−2)

2.「SeaTalk」接続の計器かオートパイロット装置の照度レベルを0(LAMP0)に選択する
3.「チラーパイロット」が直ちに反応して照度レベルをオフにする。もし照度レベルがオフされないときは、「チラーパイロット」と計器あるいは操縦装置との間に配線エラーがある。

5.2 試験航海

(警告)
この試験航海が失敗したときオートパイロットの性能があるコンパス針路において悪くなる結果を生じることがある。
システムが正しく動作していることをチェックしたとき、短い試験航海をして完全にコンパスを較正する必要がある。
「チラーパイロット」には較正機能が組み込まれているので、船の操舵システムやその操舵性能に合致したファインチューニングをすることができる。
工場から出荷されたとき、オートパイロットはほとんどの船で安全で安定な制御ができるように較正されている。
・完全な試験航海が終わるまで、推奨較正値を書き換えてはならない
・試験航海は軽風の穏やかな海面で行わなければならない。そうすることで強風や高波の影響を排除したオートパイロットの性能を知ることができる

試験航海をはじめる前に
試験航海をする前に、次の事をしなければならない
・較正値セットの確認と、もし必要なら、較正値をデフォルト値にリセットする(原文p63)
・据付状態をチェックして、無線電波やエンジン始動による影響がないことをチェックする

コンパスの較正
コンパス偏倚の自動較正
以下のコンパス較正手続きを行うことで「チラーパイロット」は最も偏倚している磁界に対しても内部磁気コンパスを較正できる。試験航海をはじめるに際してまず最初にコンパス偏倚の較正を行わなければならない。
コンパス構成を行うには:
1.プッシュロッドを延ばすか縮めるかしてロッドの端をチラーピンの上におく
2.「standby」を1秒間押し続ける。一連の破線が円を描くように表示される
(図 D3272−2)

3.船の速度を2ノット以下に保ち、「−10」と「+10」ボタンを使って船がゆっくりと円を描くようにする。どの一回転360度を描くのにも最低3分を要するように行う
(図 D3273−2)

4.ボートを回転しつづけるとやがてオートパイロットが検出した偏倚量を表示するようになる(これは一回半から二回の回転を要する)。偏倚量は現在の針路と1秒ごとに交互に表示される。
(図 D3274−2)

針路較正
1.「−1」と「+1」ボタンを使って表示されている針路を加減し、船の操舵コンパスあるいは見通し線と合致するように調整する
2.次の何れかを行い、コンパス較正及び針路較正手続きから抜け出て、コンパス較正、針路較正値を書き換える
・「standby」を1秒間押しつづけ、パイロットがビープ音を出すまで待つ
・あるいは、「standby」を瞬間押して較正値を書き換えずに抜け出る
(注)
据付時にST50あるいはST30の操舵コンパスが「SeaTalk」を介して接続され、且つ、操舵コンパスが磁束トランスデューサーを備えている場合、操舵コンパス装置の自動偏倚較正のみを行えばよい(操舵コンパスハンドブックの操作を参照)。

さらなる針路較正
針路較正がさらに必要なときは、「standby」ボタンを1秒間押してコンパス偏倚較正に再度入る。
1.「auto」を押して偏倚較正をスキップし針路較正に入る
2.上述の針路較正を実施する

オートパイロット操作
コンパスを較正した後、次の操作をしてオートパイロットの操作に慣れることを推奨する。
1.コンパス針路に保つ
2.プッシュロッド端をチラーピンに置く
3.「auto」ボタンを押して現在の針路にロックする。穏やかな海面なら「チラーパイロット」は一定の針路を取りつづける
4.針路を1°あるいは10°の倍数で右または左に変更する
(図 D3320−2)

5.「standby」ボタンを押し舵を手動に戻す

5.3 オートパイロットの性能調整

工場のセッティングでは「舵ゲイン」は試験航海で安定な制御が得られるようにされている。しかしながら、各々の船は舵の効きに大きな差異があり、「舵ゲイン」をさらに調整することでオートパイロットの操舵特性を向上させることができる。
次のテストを行うことで「舵ゲイン」が大きすぎるか、小さすぎるかを見ることができる。
1.穏やかな海でオートパイロットを「auto」にセットして、スターボードに40°「+10」ボタンを4回押すことで変針する。
・クルージングスピードで40°の変針はオーバーシュートが5°を越えない範囲で鋭角に変針する。これは「舵ゲイン」が正しくセットされている場合である。
・もし「舵ゲイン」が大きすぎると、40゜の変針はオーバーシュートが5゜を越えてしまう(図のA)
・もし「舵ゲイン」が小さすぎると、操舵性能は鈍くなり、40゜の変針をするのに時間がかかり、且つ、オーバーシュートが見られない(図のB)
この場合、「舵ゲイン」を増加しなければならない。
(図 D3262−2)

(注)波が操舵特性を覆い隠してしまわない穏やかな海面では,このことを認めるのは容易なことである。
2.第6章の「チラーパイロットのセッティング調整」にある較正メニューを参照し,「舵ゲイン」の調整の指示に従って調整する
3.オーバーシュートが5゜以内の鋭い変針ができるまで繰り返す
正確に進路に沿っていくには「舵ゲイン」を最も小さい値に設定しなければならない。これはまた駆動装置の動きを最小に抑え,電力消費並びに機器消耗・破損の危険を最小にすることができる。

第6章 「チラーパイロット」のセッティング調整

6.1はじめに

「チラーパイロット」はほとんどの船に対して安定な性能を提供するように工場で調整されている。しかしながら,それぞれの船のタイプや操舵装置の特性に合致するように較正値を微調整することができる。
(注)どんな較正値を調整するにせよ,その前に必ず試験航海を実施しておかなければならない。
以下のような場合,「チラーパイロット」の較正値を調整する必要がある。
・指示した針路を保針しない
・舵が効きすぎるかコース維持が確実でない
・北を向くと不安定になる(南半球では南を向くと不安定になる)
・速度計を使わずに「トラックコントロールモード」で操作する
・コースはずれの警告を変更したい
較正メニューで次の値を工場出荷時のデフォルト値から変更できる
・「舵ゲイン」
・平均航海速度
・針路はずれ警告の限度値
・偏倚
・南北方向エラー補償
・船の現在緯度
・舵のダンピング

較正値の調整
次のページには従い,
・較正メニューにはいる
・メニューをスクロールする
・較正値を調整する
・較正から抜け出る
を行う。
(図 D3344−2)

較正項目
(図 D167−07a)

・左の数字は較正項目を示し,右の数値は現在選択されている値を示す
・較正メニューから現在の値を見て,変更をしないまま抜け出ることができる。較正値を見た後、「standby」ボタンを瞬間押すことで何ら設定値に変更を加えることなく通常の操作モードに戻る。
・もし、較正に入ろうとして「CAL OFF」が表示された場合,本章末尾の項目を参照する。
(図 D214−1)

較正値のデフォルト値
次にデフォルト値を示す。これらは試験航海での安全な動作を提供するものである。

番号 項目 デフォルト値
 1 舵ゲイン 5
 5 平均航海速度 8
 6 針路はずれ警告 20
 9 磁気偏倚 off(−−)
10 南北方向エラー off(0)
11 現在緯度 0
13 舵ダンピング 3
(注)較正項目2,3,4,7,8及び12は使えない。もし、項目10が0にセットされているとき、項目11は省略される

6.2「チラーパイロット」の較正

較正項目1:舵ゲイン
較正レベル1を使って舵ゲインを調整する。これは、5.3章に述べてあるように船を動かして行う。

較正項目5:航海速度
較正レベル5を使って「トラックモード」での通常航海速度をセットする。
航海計器がインターフェイスされているとき,「チラーパイロット」は船の平均航海速度を「トラック」の計算に用いる。
(注)もし「SeaTalk」に速度計が接続されている場合,船の速度は直接オートパイロットに入る

較正項目6:針路はずれ警告
較正レベル6で針路はずれ警告の値をセットする。これは予めセットした針路をオートパイロットが維持できないときに警告を発するものである。
もし,オートパイロットが針路を決められた値以上に外れこれが20秒間続いたとき警告が発せられる。1゜単位に15゜から40゜の間にセットすることができる。

較正項目9:磁気偏倚
較正レベル9を使って,現在位置での磁気偏倚の値を入力できる。
・−ve 偏倚=西
・+ve 偏倚=東
「チラーパイロット」はこの値を「SeaTalk」のバスに送り込み,他の「SeaTalk」機器がこれを受け取る。

較正項目10:南北方向エラー較正
較正レベル10を使って北あるいは南の針路回転エラーを較正する。
・0=off
・1=北半球
・2=南半球
北半球の高緯度地方ではオートパイロットが不安定になりがちである(あるいは南半球の極近く)。
地球の磁場の沈み込みが高緯度地方では大きくなることに起因しており,これによって北向きまたは南向きの針路での舵の効きが増加する効果をもたらす。この誤差は全ての磁気コンパスに影響を及ぼし赤道から離れるほど大きくなる。
南北方向エラースイッチがオンの場合,「チラーパイロット」はこの効果を自動的に「舵ゲイン」を(針路に応じて)変えることにより補正する。この機能によってどんな方向でも正しく針路を保持できる。
(図 D3263−2)

較正項目11:現在緯度
南北方向エラー(項目10)が設定されているとき,較正レベル11を使って現在緯度(一番近い度数)を入力する必要がある。
「−1」「+1」「−10」「+10」ボタンを使って緯度をセットする。
(注)もし較正項目10がスイッチオフ(つまり0にセット)されているとき,項目11は省略される。較正項目10の時「auto」ボタンを押すことで項目13に進むことができる。

較正項目13:舵ダンピング
舵を設定するとき舵が暴れるとき、較正項目13の値を調整する。
・9段階の舵ダンピングを選べる。最初は3にセットされている
・穏やかな海面でオートパイロットが暴れるときダンピングを増加する
・保針が緩いときはダンピングを下げる
・一度に1段階づつ変えていく

較正へのアクセスコントロール
較正メニューへの不要なアクセスを次の様にして防止する。
1.「−1」「standby」を同時に10秒間押し、「CAL OFF」を表示させる
(図 D214−1)

2.「−1」「+1」ボタンを使ってONとOFFを切り替える。
3.「−1」「standby」ボタンを10秒間押し,舵の駆動を通常動作に戻どす