ヨット明り取り窓のアクリル取替修理レポート

アクリルの窓が老朽化し、アクリルの透明度が損なわれてきたことと、接着剤の劣化が顕著となって雨漏りの心配も出始めたので、新しいアクリル板と取り替えたので、その作業の概要を報告します。

1.準備
黒のシリコンシーラントで船体とアクリル窓を接着していたが、アクリル板側から剥離が生じて来始め、色も褐色になってきていた。特に船体に水が浸潤する個所として最も危険なアクリル窓取り付けビス付近はきれいな円形に空隙を形成するに至っている。

                          作業前の様子
・アクリル板の手配
取り付けはタッピングビスなので、新しい窓を取り付けるに際しても下の穴にまっすぐに入らなければ効果がない。従って、もとのアクリル窓と同一の取り付けビス穴であることが重要になる。このため、一枚づつ取り外して現物あわせで穴を決めるか、新しい板のビス穴を幾分大きめにして余裕を持たせその隙間にはシリコンを充填するか、二つの方法がある。現物合せの場合、屋根のあるドックか工場で作業するのでない限り、港に船を浮かせたまま作業するとした場合、かなりの期間窓がない状態なる恐れがある。このため,外形をなぞると共にビス穴に1mmの余裕を持たせて作成する方法に拠った。

   アクリルのマスキングカット
アクリル板を専門業者に作成してもらうとアクリルの部品代に加えて、加工賃は型取りとビス穴加工も含め1枚当たり2〜3000円程度の負担になる。
納品時に両面に保護のための紙が貼付されている。これは後のマスキング作業に使うのでなるべくエッジを剥離させないように注意して取り扱う。また、作業までに変形しないようになるべく平らな場所にストレスが掛からないようにして保管する。

・シーラントの手配
最近、「シーカフレックス」の宣伝を見かける。これを推奨するメーカーの広報では、単独使用ではなく、船体とアクリル板双方にプライマーを塗布することを勧めている。また当該シーラントを入手するには通信販売に頼ることとなる。時間と未知の部分があるのを嫌い、今回は、これまでの実績のあるセメダイン社のシリコンシーラント8050を使った。DIY量販店などでの廉売品の多くには、アクリルは使えないとの注意書きがある事が多いので、購入に際しては注意を要する。

・その他の準備品
貼り付けに際しての気泡を見えなくするためにアクリル板の接着部分の裏面に塗布する黒のアクリル用吹きつけペイント。新しい2.4cm幅のマスキングテープ。船体の接着面養生のためのスクライバー。アクリル板を現物調整する際に使用する鑢、ドリル及び電動サンダー。アクリル板裏面マスク作成にも使用するカッターナイフ。はみ出たシーラントを除去する時に使うウエス、ティシュまたはキッチン紙タオル、シンナー。

2.古いアクリルの取り外し
今回、古いアクリル板の裏に何らかのプライマーを塗布してあり、これが劣化変色して粉末状に変質していたので、取り外しは容易であった。通常の場合は、シーラントが一面に付いているのでアクリル板を破壊して取り除くことが多いとのことであった。このとき、意外と重宝したのが、キールの底の藤壺を潜水して取り除くのに使うお好み焼き用の箆である。アクリルと船体の間に入るくらいの傾きがあるので、先端をアクリル板と船体の間に入れ、柄の部分を梃子にして揺動させると船体及びアクリル板双方に余り負担を掛けずに切り離すことができる。この後、船体または取り外したアクリル板と新しいアクリル板を比べて外形やビス穴位置を現物合せで調べる。もし必要なら、ビスの穴ぐりやアクリル板の削り落としを行う。特に、ビス穴基準でアクリル板が下方向に大きいときは船体の突起とぶつかり、取り付けができなくなるので、予め下を切っておくことが後の手間から見て効果がある。切削量が少ないときは鑢で大きいときは電動サンダーを使う。切削の後、保護用紙の端にめくれが出るのでマスキングテープなどで補修しておく。

3.養生
船体側は、スクレーパーやカッターナイフで古いシーラントを取り除き、元の船体が見える程度に養生をする。元のシーラントの位置を参考にしてマスキングテープをはる。アクリルの窓の隅は曲面になっているので、アクリル板を当てて、マスキングテープをカットすると、きれいなマスキングが得られる。船内の窓枠にもマスキングテープを貼付する。窓の縁から2〜3mm程度中に入ったところに縁となるべく平行にテープを貼付する。
新しいアクリル板は、窓にビス止めして船内から窓のふちを鉛筆で形取り、カッターナイフでなぞって外側の部分を取り除く。紙がついているところが船内から見える窓であり、その外側は船体とシーラントで固着される部分となる。シーラントを貼付しアクリル板で抑えて均一にするのであるが、どうしても気泡が入り仕上がりがきれいでないので、この部分を見えなくするため黒く塗ってします。岸壁でアクリル塗装用のラッカーを吹き付けよく乾燥させておく。

4.新しいアクリル窓の取り付け
船体がわにシーラントを十分塗布し、ビス穴を探って固定する。締める時は全体がなるべく平行にしまるように一箇所を一時に締めこんでしまわないようにする。また、締め過ぎてシーラントが薄くなりすぎてもまずいので、1〜2mmが均一に残るイメージで加減する。
締め込んでいくと、アクリルの縁や船内の窓の縁にシーラントが溢れ出てくるので、他に垂れないように指で拭い取りつつ、シーラントの仕上がり形状をなぞって作る。シーラントの硬化を待ち、指で触るとべたつく感じはするが指についてこない程度になるまでにして、マスキングテープを取り除く。遅すぎると、マスキングテープを取り外してもシーラントが切れずに残ってしまう。この時間は夏では半日位である。日の当たる側は早く、船内及び日陰の窓は少し遅い。